【 リア 】   「ふふっ、ついつい買いすぎちゃった
  満面のにこにこ顔で和菓子屋はなむらを出たリアの手には、大好きな和菓子を詰めた袋があった。
  【 リア 】   「今日のお茶は、どれと一緒にいただこうかな……あぁ、迷っちゃうなぁ……」
  【 リア 】   「うん、とにかく急いで帰らなきゃ!」
  袋をぎゅっと胸に抱えると、リアは踊るような歩調で歩き出す。
  【 リア 】   「♪〜……あれ? あそこにいるのは、もしかして……」
  【 リア 】   「あ、やっぱり。こんにちは、シン君」
  【 シン 】   「あれっ? リア先輩!? こっ、こんにちわ!」
  【 リア 】   「うん。元気な挨拶だね。感心しちゃうな」
  【 シン 】   「生徒会長ですから!」
  【 リア 】   「うむ。その心意気だゾ★」
  【 シン 】   「ところで、リア先輩はお買い物ですか?」
  【 リア 】   「うん。お茶請けの和菓子を買ってきたところなんだ」
  【 リア 】   「これから、帰ってお姉ちゃんとお茶にしようかな、って」
  【 シン 】   「へえ、そうだったんですか。優雅だなー」
  【 リア 】   「それで、シン君はこんなところでどうしたの? お休みの日なのに、もしかしてアルバイト?」
  【 シン 】   「いえいえ、違います」
  【 シン 】   「実は知り合いのお店の前を通った時、ちょっと手伝いを頼まれちゃって……」
  【 シン 】   「それでさっきまで、そのお店の手伝いをしてたんですよ。今はその帰りなんです」
  【 リア 】   「そうなの? すごいねシン君。やっぱり感心しちゃう」
  【 シン 】   「え? そ、そんなことはないですからいやもう全然これっぽっちも」
  【 リア 】   「ううん、そんなことあるよ。シン君はすごく立派だと思うな」
  【 リア 】   「もうさすが生徒会長ーってくらいに」
  【 シン 】   「そ、そうですか?」
  【 リア 】   「うん。先輩の私が言うんだから、間違いないの」
  【 リア 】   「あ、そうだ。ねえシン君。良かったらこれから、シン君も一緒に、お茶なんてどうかな?」
  【 リア 】   「しかもなんと! 先輩が特別におごってあげちゃいます!」
  【 シン 】   「いや、そんな、悪いですよ」
  【 リア 】   「悪くないよ。シン君が頑張ってる、ご褒美に、ね?」
  【 リア 】   「どれでも好きな和菓子、つけちゃうんだから」
  【 シン 】   「ごちそうになります!」
  【 リア 】   「うん。じゃあ、行こっか♪」
  【 ヘレナ 】   「うん。その前に行くとこがあるわよね♪」
  【 シン 】   「うわあ!?」
  【 リア 】   「きゃっ!? お、お姉ちゃん!? もうっ、脅かさないでよっ」
  【 ヘレナ 】   「そっちが勝手に驚いてるだけでしょーが」
  【 シン 】   「あの、理事長もお買い物ですか?」
  【 ヘレナ 】   「そうね〜、お買い物って言えばお買い物だけど、買うのは私じゃないんだなー」
  【 リア 】   「あ」
  【 シン 】   「どうしたんですか、リア先輩?」
  【 ヘレナ 】   「やっぱりね。帰りが遅いから待ちきれなくなって見に来てみれば……」
  【 ヘレナ 】   「心配した通り、お使いの事なんてすっかり忘れてるじゃないの」
  【 リア 】   「あうぅ……」
  【 ヘレナ 】   「その上シンちゃんを引っかけて、楽しそうにいちゃついちゃってるし」
  【 リア 】   「べっ、別に、いちゃついてなんかいないもんっ! ねっ、シン君!」
  【 シン 】   「えっ? はい! もちろんです!」
  【 ヘレナ 】   「ふぅ〜ん。でも、お使いを忘れてたのは事実よね」
  【 リア 】   「それは……ごめんなさい。和菓子に夢中で、つい……」
  【 ヘレナ 】   「ふふん、謝ってもだめね〜。そんな悪い子ちゃんには、お仕置きが必要だわ。えいっ!」
  むにゅん!
  ヘレナは素早くリアの背後に回り込むと、リアの胸をがっつり鷲掴んだ。
  【 リア 】   「えぇっ!? きゃ! もぅ、ちょっと! お姉ちゃん!?」
  ふにゅふにゅっ!
  【 ヘレナ 】   「んっふふ〜、いいわねぇ、いつ揉んでもすばらしい感触だわ!」
  【 リア 】   「んあっ、ぁふ、ん……」
  【 シン 】   「あ、あばばばばば……」
  【 リア 】   「お姉ちゃん! 放してっ、シン君が顔面蒼白じゃないっ!」
  【 ヘレナ 】   「あぁら、シンちゃんはリアがお仕置きされる姿を見て興奮してるのよ。ねえ?」
  【 シン 】   「あばばば……あ、あんな柔らかそうなものが……あぁっ、柔らかそうな和菓子がつぶれるっ!」
  【 シン 】   「和菓子がふにゃふにゃに……うああ、和菓子じゃないものまでふにゃふにゃだぁ……」
  【 シン 】   「和菓子が、柔らかくて、むにむにっと、つぶれて、戻って、和菓子が、あばばどうすれば……」
  【 リア 】   「し、シン君……?」
  【 ヘレナ 】   「あら、ホントにやばそうね。もっとやっちゃおうかしら♪」
  ぷにゅんっ!
  【 リア 】   「あ、ゃあぁんっ! もぅ、お姉ちゃん、だめだってばぁっ!」
  【 ヘレナ 】   「だめじゃないわよぅ。ほら、暴れないでもっと揉ませなさい」
  【 リア 】   「だめだよっ、これ以上やったら和菓子が型くずれしちゃう」
  【 シン 】   「あばば……」
  【 ヘレナ 】   「シンちゃんの脳みそも型くずれしそうだしね」
  【 リア 】   「もうっ、そう思うなら放してよっ!」
  【 ヘレナ 】   「あんっ、強引ねぇ」
  リアはめいっぱい身体をひねって、ヘレナの魔手から脱出する。
  【 リア 】   「あっ……!」
  その拍子に、勢いのついたリアの手から和菓子の袋がすっぽ抜けた。
  【 リア 】   「だめぇっ!」
  ぷにゅっ♪
  【 シン 】    「ふもがふっ」
  慌てて和菓子を追いかけたリアは、軽く飛び上がって見事に袋を受け止める。
  【 リア 】   「ふぅ、危なかった……」
  【 ヘレナ 】    「おおぅ、ナイスキャッチ!」
  【 リア 】   「お姉ちゃん、ふざけないでよ〜。危ないところだったんだから」
  【 ヘレナ 】    「いやいや、ナイスキャッチなのはそっちよそっち」
  【 リア 】   「え……?」
  リアはヘレナに指摘され、ようやく自分の胸の谷間に挟まっているものに気がつく。
  【 リア 】   「えぇぇっ!? し、シン君っ!?」
  【 シン 】   「…………」
  【 ヘレナ 】    「まさか顔面挟み込むとは、やるわね!」
  【 リア 】   「サムズアップなんていらないよ〜!」
  【 シン 】   「へぶあっ……」
  鼻から真っ赤な火を噴いて、シンはその場に崩れ落ちた。
  【 リア 】   「きゃあっ!? シン君大丈夫っ!? しっかりしてっ!」
  【 ヘレナ 】   「あちゃ〜、私知〜らないっと」
  【 リア 】   「ちょっと、どこ行くのお姉ちゃん!?」
  【 ヘレナ 】   「こういう時は『逃げるが勝ち』ってな! あ、お使いはもういいから」
  【 リア 】   「そんな、ひどいよっ」
  【 ヘレナ 】   「ひどいのはあんたの胸でしょうが」
  【 リア 】   「はうっ……」
  【 ヘレナ 】    「んじゃ〜ね〜。しっかり介抱してあげるのよ〜」
  【 リア 】   「もう……お姉ちゃんってばいっつもこうなんだから……」
  【 シン 】   「あ、あぶば……」
  【 リア 】   「はっ! し、シン君? 大丈夫?」
  【 シン 】   「う、ううん……だ、だめかもしれません……がふっ」
  【 リア 】   「あぁっ、シン君……どうしよう、どうしたらいいのかな……」
  【 リア 】   「ううん、焦っちゃだめだよ。今は私がお姉ちゃんなんだから、もっとしっかりしなきゃ!」
  【 リア 】   「えっと、シン君は鼻血を出してて、意識がなくて、えっとえっと……」
  【 リア 】   「そうだ! 人工呼吸!」
  【 シン 】   「はっぶぁ!? もう平気でっす!」
  【 リア 】   「え、でも……」
  【 シン 】   「大丈夫です! これぐらい、なんでもありませんから!」
  【 リア 】   「ホントに? ほっ、よかったぁ」
  復活したシンの元気な姿を見て、リアはのんびりと胸をなで下ろす。
  ぷるるんっ
  【 シン 】   「あ、あばば、また、揺れてる……」
  【 リア 】   「えっ? シン君っ!?」
  ばたーん!