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【 さっちん 】 |
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「ナナちゃんナナちゃんっ、今日の小テストの勉強やったー?」 |
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【 ナナカ 】 |
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「うーん、何と言うか……ぼちぼちってとこ?」 |
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【 さっちん 】 |
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「えーっ、そーなんだー。私はさっぱりだよー」 |
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【 ナナカ 】 |
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「なに、小テストなんて、気合いでどうにでもなるって!」 |
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【 さっちん 】 |
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「そうだねー。シン君も、気合十分って感じだもんねー」 |
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【 ナナカ 】 |
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「あー、あいつはね……」 |
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さっちんに言われて振り返ったナナカの目に、席について追い込み中のシンの姿がとまる。 |
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【 ナナカ 】 |
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「たかが小テストなのに、律儀に徹夜なんかしちゃってさ。しかも昼休みまで勉強してやんの」 |
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【 ナナカ 】 |
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「ほらほら、見てやってよ、朝からひどい顔でしょ?」 |
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【 さっちん 】 |
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「あはは、そうだねー」 |
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【 シン 】 |
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「うぅ、ひどいのは二人の方だよ。こっちは真面目にやってるのに」 |
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【 ナナカ 】 |
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「あー、ごめんごめん。そだね、あんたは生活かかってるんだった」 |
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【 さっちん 】 |
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「ナナちゃん、楽しそうに言う台詞じゃないよー」 |
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【 ナナカ 】 |
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「あんたもね」 |
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【 ナナカ 】 |
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「ま、それでも前向きに生きてるところが、シンのいいところなんじゃない?」 |
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【 シン 】 |
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「あぁっ!」 |
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【 ナナカ 】 |
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「何、どした? 眠気覚ましの一発?」 |
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【 シン 】 |
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「勉強に夢中で、参考書を家に忘れてきてしまった……」 |
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【 ナナカ 】 |
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「それって、机の上に出しっぱなしにしてあったやつ?」 |
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【 シン 】 |
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「うん、そうだけど」 |
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【 ナナカ 】 |
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「だったら、ほい」 |
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ナナカはシンの鞄から参考書を引っ張り出して、シンに投げて寄越す。 |
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【 シン 】 |
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「あれ? 朝寝ぼけてる間に入れたのかな?」 |
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【 ナナカ 】 |
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「何馬鹿な事言ってんの。寝ぼけてんのはむしろ、今この瞬間でしょうが」 |
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【 シン 】 |
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「そ、そうだったのか……」 |
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【 ナナカ 】 |
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「これは、あんたの忘れ物に気づいたアタシが、気を利かせて鞄に入れといてあげたの」 |
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【 ナナカ 】 |
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「寝ぼけるどころか、あんたがまだぐーすか寝てる間の出来事なわけよ」 |
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【 さっちん 】 |
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「おお〜、さすがナナちゃん。長年連れ添ってるだけの事はあるねー」 |
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【 ナナカ 】 |
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「ふっふ〜ん、まぁね〜♪」 |
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【 シン 】 |
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「そっかー。ありがとうナナカ。助かったよ」 |
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【 ナナカ 】 |
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「うりうり、もっと感謝してもばちは当たんないぞ〜」 |
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【 シン 】 |
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「そうだね。それじゃあ――」 |
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【 ナナカ 】 |
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「おぉっと、その手を懐から出しな! 恩を仇で返す気か!」 |
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【 シン 】 |
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「そんな、牛乳おいしいのに……」 |
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【 ナナカ 】 |
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「味とか関係なし! ダメなものはダメっ!」 |
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【 ナナカ 】 |
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「それよりさ、小テストのヤマ教えてよ。そっちの方が最優先!」 |
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【 シン 】 |
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「小テストでヤマも何もないと思うけど、それくらいならお安い御用さ」 |
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【 ナナカ 】 |
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「ラッキー! さっすが生徒会長、頼りになるねえ!」 |
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【 さっちん 】 |
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「ナナちゃん調子いいねー。私もまぜてー」 |
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【 ナナカ 】 |
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「だから、さっちんも人の事言えないんだってば」 |
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きーんこーんかーんこーん |
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【 シン 】 |
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「あぁっ!」 |
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【 ナナカ 】 |
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「今度は何? 電気代でも払い忘れた?」 |
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【 シン 】 |
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「次の授業って何だったっけ?」 |
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【 ナナカ 】 |
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「体育でしょ」 |
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【 シン 】 |
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「う、やっぱり……」 |
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【 さっちん 】 |
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「なになにー? 忘れ物ー?」 |
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【 シン 】 |
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「うん、体操着を持ってきた記憶がなくて……」 |
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【 シン 】 |
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「どうしよう。牛乳飲んで健康なのに、見学するのは気が引けるしなー……」 |
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【 ナナカ 】 |
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「なんだ、そんな事ね」 |
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【 シン 】 |
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「そんな事ってどんな事?」 |
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【 ナナカ 】 |
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「大した問題じゃないって事。ほれ」 |
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【 シン 】 |
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「あっ」 |
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シンはナナカが放った体操着入れを慌てて受けとめる。 |
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【 シン 】 |
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「これも持って来てくれたんだ」 |
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【 ナナカ 】 |
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「そゆこと。朝渡しとけばよかった?」 |
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【 シン 】 |
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「ううん、助かったよ。これで体育を見学しなくて済みそうだ」 |
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【 ナナカ 】 |
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「ったく、しっかりしなさいよ。徹夜明けはいっつもぼさっとしてるんだから」 |
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【 シン 】 |
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「うん。でもナナカがいてくれれば安心だね」 |
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【 ナナカ 】 |
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「何言ってんだい、生徒会長が人の事ばっか当てにしてどうすんのさ」 |
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【 シン 】 |
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「ナナカだって、テストの時は僕の事を当てにしてたじゃないか」 |
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【 ナナカ 】 |
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「それはそれ、これはこれ。ま、お互い持ちつ持たれつって事で」 |
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【 シン 】 |
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「うーん、まぁいいや、そういう事で」 |
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【 さっちん 】 |
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「おーいナナちゃ〜ん。そろそろ着替えに行こー?」 |
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【 ナナカ 】 |
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「あいよー」 |
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【 ナナカ 】 |
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「そんじゃ、シン、寝不足でぶっ倒れたりしないようにね」 |
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【 シン 】 |
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「わかってるよ」 |
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ナナカたちと別れたシンは、自分も男子の更衣室へと向かった。 |
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【 シン 】 |
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「さてと、早く着替えないと休み時間が終わっちゃうよ……」 |
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【 シン 】 |
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「……ん? あれ、おっかしーなー。僕の体操着って、こんなんだったっけ?」 |
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シンは首をひねりならが、ナナカから渡された体操着入れの中身を広げてみる。 |
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【 シン 】 |
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「って、これはっ!? じょ、女子の体操着じゃないかっ!?」 |
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【 シン 】 |
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「こ、これにナナカの汗が……いやいや、洗濯してあるから残念……ってそうじゃなくてっ!」 |
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【 シン 】 |
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「ナナカのやつ、きっと渡す時に取り違えたんだな。あっちも困ってるだろうから、早く届けてあげないと!」 |
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自分の着替えもそっちのけで、シンは慌てて更衣室を飛び出した。 |
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【 ナナカ 】 |
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「あっ、シン!」 |
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【 シン 】 |
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「ナナカ! ちょうどいいところに」 |
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【 ナナカ 】 |
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「ってこら! なに人の体操着握り締めてんのっ!」 |
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【 シン 】 |
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「えっ、あ、これはその、ナナカに届けようと思って」 |
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【 ナナカ 】 |
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「なんだとう!? 女子更衣室に忍び込むつもりだったんかい!」 |
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【 シン 】 |
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「そそそっ、そんな事しないよ!?」 |
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【 ナナカ 】 |
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「こっちはシンが困ってるだろうと思って、急いであんたの体操着届けに来てやったのに、この変態!」 |
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【 シン 】 |
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「だから、違うんだってば!」 |
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【 ナナカ 】 |
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「そんな半裸で何を言う!」 |
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【 シン 】 |
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「はっ、しまった!? 着替えの途中なの忘れてた!」 |
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【 さっちん 】 |
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「わー、ホントに変態だねー」 |
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【 シン 】 |
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「さっちんにまで見られたっ!?」 |
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【 ナナカ 】 |
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「とことん救いようのないやつ! いっぺん痛い目見とけってんだ!」 |
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【 シン 】 |
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「わぁーっ! ちょっとタンマ!」 |
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【 ナナカ 】 |
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「問答無用! ナナカ・ソバット!」 |
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ずどばしっ! |
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【 シン 】 |
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「あぱあっ……!」 |
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どさっ |
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【 さっちん 】 |
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「お〜、見事に一発KOだねー」 |
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【 ナナカ 】 |
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「ま、ざっとこんなもんよ」 |
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【 さっちん 】 |
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「でもシン君、白目剥いてるよー?」 |
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【 ナナカ 】 |
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「え? あれ、ちょっとやりすぎちった?」 |
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【 ナナカ 】 |
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「おーい、シーン、起きろー」 |
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ばしばしばしばし! |
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【 さっちん 】 |
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「……起きないねー」 |
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【 ナナカ 】 |
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「ったく、徹夜なんてするから授業で起きてられないってのが、わかんないのかねぇ」 |
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【 さっちん 】 |
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「あー、徹夜のせいなんだー。それで、どーするのー?」 |
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【 ナナカ 】 |
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「とりあえず、保健室にでも連れて行って様子見るか」 |
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【 ナナカ 】 |
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「先生には、貧血で倒れたやつの付き添いで遅れるとか、適当に言っといて」 |
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【 さっちん 】 |
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「うん、わかったー。それにしても、ナナちゃん相変わらず面倒見がいいねー」 |
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【 ナナカ 】 |
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「何言ってんの! ただの腐れ縁だから、仕方なくやってんの!」 |
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【 ナナカ 】 |
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「ほらシン! とっとと歩く!」 |
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ずるずる…… |
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【 さっちん 】 |
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「無理だと思うよー」 |
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その後、シンはふらふらの状態で体育の授業を受ける事になるのだった。 |